★ショートストーリー.社内裁判vol4★

前回までの話

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 課長「罪の意識なんて、ありませんよ」

 

あまりに開き直った態度に会議室はにわかに騒がしくなります。

批判する声、賛同の声、おもしろがって囃し立てる声。

 

副部長「ほう、罪の意識はない?」

 

課長「ええ、ありません。先程副部長が仰った通り、仕事面ではなんら迷惑をかけていませんから。むしろプライベートの 事でここまで会社に干渉されるとは心外です」

 

副部長「なるほど。あくまで栄子さんとの関係は社外で完結していたということですね。

では、ご家族に対してはどうですか?『申し訳ない』という気持ちなど?」

 

課長「家族に対しては…ないと言えば嘘になりますね。特に子供に対しては。ですが、家族関係の悪さも不倫してしまった原因の1つであるし、家族関係の悪さは私一人でなく家族全員の責任と考えています」

 

責任転嫁するような発言にまたも会議室はどよめきに包まれます。

 

副部長「よく分かりました、ありがとうございます。これで私からの尋問は終わります」

 

先輩「それでは続いて検事、被告尋問は行いますか?」

 

なぎ「はい、尋問を行います。

課長殿、悪気はないとのことですが、本日こうして社員の時間を取っていること、そして二人の裏切りを知って動揺した社員たちの心情を推し量っても、なお悪いとは思わないと申されますか?」

 

課長「ないですね。これも副部長が最初に申された通り、不倫を倫理悪と見なすことが偏見の塊ですから、本日このような事態に発展してしまったのは私が不倫をしたせいではなく、社会が狭い価値観の中で構成されているからですよ。

社員の動揺に関しても同じですね。動揺する必要なんかないし、そもそも私が何を、誰を裏切ったというのでしょう。妻に裏切りを責めらるならともかく、会社の人間に裏切りだと詰られる筋合いはないですね」

 

なぎ「上場企業の課長ともあろう方が現代社会の倫理観を否定されるといことですね。

今奥様のことが話に出ましたが、ご家族に対しては謝罪の気持ちはありつつも、責任を感じて欲しいというような旨を先ほど仰っていましたね」

 

課長「私が家庭外で別の女性の存在を求めてしまったのは、冷え切った家族関係が原因の一つです。働く夫を労うこともしない妻と、父親と会話を持とうとしない息子。母親と息子が結託して私を悪者にしているのは明らかです。仕事に疲れた私に家庭は休息の場となりえない。ならば他に癒しを求めるしかないでしょう」

 

心なしか中年男性軍がうなずいているように見えます。

 

なぎ「それでは栄子さんに対してはどうですか?謝罪の気持ちをお持ちですか?」

 

課長「栄子さんは共犯者です。謝罪の対象ではない」

 

なぎ「そうでしょうか。結婚適齢期の1年間を惜しげもなく課長殿に捧げたのですよ。あなたには結局家庭という帰る場所があるけれど、栄子さんにはそれもない。今回の騒動により、社内で新しい人と出会うことも難しくなったでしょう。彼女もあなたに振り回された被害者の一人と考えることはできませんか?」

 

課長「彼女は私に妻子があることを承知の上で付き合っていたのだよ、もちろん私に離婚の意思がないことも伝えていた。そして家庭が帰る場所などと思ってもらっては困る、家庭内の居心地の悪さはさきほど伝えた通りだ。家庭に理想郷を見るのも、独身アラサーに同情的になるのも、なぎさくん自信が結婚適齢期の独身女性だからだろう。私情を混同するのは辞めて頂きたい」

 

なぎ「う・・・。課長殿に反省の余地がないことがよく分かりました。以上で反対尋問を終わります」

 

言い返せる言葉もなく、なぎはそそくさと着席しました。課長も被告席へ戻ります。

 

先輩「それでは続いて証人喚問に移ります。検事側から一名の証人申請を受けています」

 

なぎ「はい、美子さんを証人として喚問します」

 

いつもよりチークとシャドウが濃い美子さんが、綺麗にセットされたパーマセミロングをなびかせながら入室しました。

悩まし気なボディを絶妙にくねらせながら宣誓を行うと、先ほどまで課長が座っていた証人席に着席しました。

 

なぎ「美子さん、本日はご協力いただきありがとうございます」

 

美子さん「いいえ、いいんですのよ、わたくしの正義感が黙っていられなかっただけですから」

 

なぎ「それでは発見時の状況を、時系列で教えて頂けますか?」

 

美子さん「はい、あれは2週間前、マイハズバンドと記念日の食事をした帰り道のことでした・・・」

TO BE CONTINUED…

Appellate Judges Swearing In Ceremony