★ショートストーリー.チェリーボーイの寿命vol.2★

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♪we wish a merry xmas…

♪ジングルベールジングルベー…

♪真っ赤なおっはっなっのー…

 

オフィスを出ればクリスマスソングが童貞を包み込む。

イルミネーションでライトアップされた道を明るい顔のカップルたちが腕を組んで歩く。

童貞「あぁ、寂しい、寒い、暖め合いたい…」

 

アパートのドアを開ければ冷たく暗い部屋が童貞を迎える。カーテンを開け放しているおかげで道路の街頭が部屋の中まで照らしている。

その明かりを頼りにワンルームのテーブルへ、スーパーで仕入れた惣菜を投げ置く。パックが袋からこぼれて「30円引き」のシールが顔をのぞかせる。

童貞はカーテンを閉めて部屋の明かりを付けた。朝出た時と同じ、脱ぎ散らかした寝間着とちらかったベッド、そしてベッドに腰かける白シャツにタイトスカートの女、

 

 

ベッドに腰かけるタイトスカートの女

 

 

童貞の心臓が跳ね上がる。

 

 

ベッドに腰かける女!!!

 

どう考えても不法侵入者である。もしくは童貞をこじらせた童貞が無意識のうちに連れ込んでしまったのだろうか。

童貞の心臓は早鐘を打ち始めた。自分の部屋に若い女と二人きり、という初めて且つ憧れ続けたシチュエーションに緊張している訳ではない。不測の事態が発生し身の危険を感じている時の症状である。

 

「ここで何をしている?」かすれた声で童貞が聞いた。

 

「不審な者ではありません」と女は答えたがどう考えても不審者である。

「私、こういう者です」

ベッドから立ち上がると律儀に名刺を差し出した。

 

『サキュバス  幸子』

 

「どこぞやのスナックでしょうか?」

「スナック?私はお菓子じゃありません、サキュバスです」

全く会話が噛み合わないのである。

 

「人間界では名刺を受けたら自分も差し出すのが礼儀だと聞きましたが?」

「時と場合によります。今は絶対に差し出したらいけない時です」

「あらそう。まあいいわ、正直名前なんて重要じゃないから」

急にフランクな物言いになると女はひたと童貞を見据えた。

 

「大事なのは、あなたが童貞だということ。それも29歳のね」

 

体温が一気に上がったのが分かった。12月なのに額にじっとりと汗が浮かぶ。

 

この女、なぜ俺の秘密を知っている?

 

「なにが望みなんだ?」童貞は恐怖を隠せない口調で問うた。

 

妖艶な笑みを浮かべて幸子は答えた。

「魂よ。30歳になったらあなたのピュアな魂を渡してほしいの」

 

TO BE CONTINUED…

 

 

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