★ショートストーリー.チェリーボーイの寿命 final★

前話はこちら

 ★★★★★★★★★★★

「おはよう!なぎさ!昨日はまじでごめんな…」

「あの女性こそ、大丈夫だった?!」

「あぁ、あいつは(人間じゃないから)大丈夫だよ。

ところでさ、こんなこと聞くのも恥ずかしいけど…女性ってどんなシチュエーションの告白が嬉しい?」

「ほほーう。好きな人から好きって言われたらそれだけで嬉しいよ。特別なシチュエーションは要らんと思うな。用意するなら花束かな!」

「花束か。よし!ありがとうな!」

 

「幸子!ただいま!!俺の魂を捕まえに聞いて欲しいことがある!」

「安心して、あなたの魂を取るのは20時06分を過ぎてからよ」

「あぁ、俺の出生時刻か…。意外と律儀なんだな、魂業界は」

「さぁ、最後の晩餐としましょう。あなたが持って帰ってきたバラの花束も今日のテーブルコーデにぴったりだわ」

「この花束は幸子、君に贈りたいんだ」

「まぁ、ありがとう!」

「俺、本当に感謝してるんだ。

ここ数年、俺は童貞である自分を恥じてばかりいた。どうしたら童貞から脱却できるか、そればかり考えていた。かつて、ロストチェリーしていく同級生を尻目に、性欲に負けて適当な相手を選ぶことだけは嫌だって思ってたのにな。

それでな幸子、その初心を思い出させてくれたのはお前だよ。信念まで捨てるなって言われて、思い至ったんだ。

大事なことを忘れずに済んだ、ありがとう」

童貞は頭を下げた。幸子はその頭をくしゃくしゃと撫でた。

 

童貞は頭を下げたまま話し続ける。

「それで、俺が初めてを捧げるに相応しい相手なんだけど、お前しかいないと思うんだ、幸子」

幸子は童貞の頭を撫で続ける。

「俺の魂を貰いにきたお前にこんなこと言うの馬鹿げてるけど。幸子、お前が好きだ」

ようやく童貞は床から顔を上げた。

真顔の幸子と視線がかち合う。

「お馬鹿さんね。サキュバスの私が人間と恋に落ちるわけないのに」

「分かってる。でもいいんだ。伝えられてよかった。お前に魂を持って行かれるなら本望だ」

 

時間は容赦なく進む。慈悲もなく時計は20時06分を指す。

「時が来たわ。あなたの魂は新たなステージを迎えた」

「あぁ…ち、因みに魂を抜くってどうやるんだ?!」

「サキュバスの口付けよ。その時人間が何を感じるかは残念ながら知らない」

「く、口付け?!キス、だと…!」

童貞が戸惑う間にも、舌舐めずりするサキュバスの顔が接近してくる。甘く濃厚な香りに包まれ、唇が重ねられる。

吸い付くような動きに童貞の脳みそがとろけていく。脳みそと心が混ざり合って混沌とした何かが口からどろりと流れ出て

 

「とろけそうだ」

唇が離れた時、童貞は思わず口に出していた。

「なんてこと」幸子が呆然と呟いた。

「な、なんてことだ…これが…これがディープキスか…!」童貞が呟き続けている。

「あなたのせいだわ!」突然幸子が叫んだ。

「俺のせいだって?!童貞の俺がディープキスをうまく出来るはずないだろう、こんなこと言わせんな!」

「違うの、キスで魂を貰うことはもう出来ないわ」

「え?キス以外の方法じゃなきゃいけないってことか?もう一回ぐらい従来の方法を試してみたほうがいいんじゃないかな、僕は全然構わないよ」

「違うのよ!私は人間になってしまったのよ!サキュバスは恋をすると人間になってしまうの!!」

「な、なんだって?!それはつまり、つまり…そういうことでいいのか?」

「堕天したサキュバスは二度と戻れない…。私は命に終わりある人間になってしまったのよ」

「好きなんだよな?俺のこと。だったら人間になったって問題ないよ。だって俺が一生面倒見るから」

いつかの夜のように童貞は幸子を抱きしめた。彼女の身体は温かかった。

「ほんと?ずっと一緒に居てくれる?」

「あぁ、もちろん。

ただ、今のままだと俺は人外の存在に狙われたままで、君のことを危険に晒しかねない。

つまりそのぅ…さっきの続きがしたいのだけれど」

 

こうして2人は、寒い夜を暖め合って過ごしましたとさ★

 

fin

 

 

 

メリークリスマス★

ほんじゃね!

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