『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』大島真寿美|実在した浄瑠璃作家の人生

こんにちは、なぎさです。

本日は大島真寿美さん著作、『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』をご紹介します。

江戸時代に実在した浄瑠璃作家、近松半二を題材にした小説です。

2019年上半期の直木賞受賞作です。

動画でサクッと紹介

動画で『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』をご紹介します。7分の動画です。

『渦妹背山婦女庭訓魂結び』大島真寿美 祝☆2019年上半期直木賞

あらすじ

浄瑠璃が好きな父親に連れられ、幼いころから浄瑠璃小屋に通っていた半二。成長後は周囲が悲しむぐらいの浄瑠璃狂いになる。

相変わらず毎日浄瑠璃小屋に通う半二はそのまま浄瑠璃小屋界隈で生活するようになり、やがては浄瑠璃作家になる。

道頓堀は竹本座の全盛期を担った近松半二。その生涯を描く。

近松半二とは

江戸時代の1700年代を生きた、浄瑠璃作家です。

「近松」という苗字はかの有名な「近松門左衛門」から取られています。

半二の父親は存命の近松門左衛門と会ったことがあるので、(残念ながら半二が生まれた時には門左衛門は死去していた)まさに浄瑠璃ブームのさなかが小説の舞台になっています。

「新版歌祭文」「妹背山婦女庭訓」などの名作を残しています。

事実は小説より奇なり

半二自身も特異なキャラクターですが、周りを固める登場人物もまたいろいろな人生を送っており「この人の半生を浄瑠璃にしたらよろし」と思ってしまうことも。

それは私たちの人生にも言えることで、「平々凡々」と思っているあなたの人生もクローズアップすると山あり谷あり、物語にならない人生なんてないんやと。

人生はいつだって物語、ということを教えてくれる小説です。

物語を書くということ

主人公の近松半二が作家ということで、物語を生み出す大変さや、物語とはなんぞやということがテーマの一つになっています。

語っているのは半二やけども、書いているのは大島真寿美さんという現代の作家。作家さんが物語について語るという、小説好きにはなんとも感慨深いテーマです。

タイトル解説

なかなか覚えられないタイトルでしょう!そして長い!

「渦」「妹背山婦女庭訓魂結び」「魂結び」の3単語から成り立っています。

「妹背山婦女庭訓」は近松半二が書いた作品の一つだから納得ですね。

「渦」も本書を読んだ人は理由、分かりますよね。「渦」という章があるぐらいですからね。

じゃあ「魂結び」は?

魂結び

魂が肉体から離れるのを結び留めるまじない。

「大辞林」より

という意味です。

『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』との関わりは何だというと、物語と観客(もしくは読者)の関係かなと。

物語や登場人物への想いが彼らをこの世に引き留める。だから物語は時代を超えて生き続ける。

江戸時代に作られた「妹背山婦女庭訓」かて現代も上演されてるわけやしね。作者がいなくなった今でも、この世に結び留められてる。

完全なる独自解釈やから他の読者さんの意見も聞きたいです。

妹背山婦女庭訓

タイトルに出てくる演目『妹背山婦女庭訓』は今でも上演されています。

「妹背山」は奈良県にある、吉野川を挟んで立つ「妹山」と「背山」の総称です。物語の舞台にです。

「庭訓」は教訓ですね。つまり「婦女庭訓」は「女子としての教訓」という意味です。

大化の改新(645年、中臣鎌足や中大兄皇子が調子に乗りまくっていた蘇我氏をやっつけた事変)をベースにした物語です。

あくまでベースにしただけで、史実とはことなるフィクションてんこ盛りです、これを歴史と思わないように。

ざっくりあらすじ

中臣鎌足に謀反の罪をなすりつけ、失脚させることに成功した蘇我蝦夷。

やがて蝦夷の息子・蘇我入鹿は朝廷の実験を握り、好き放題やっていた。

好き放題やりつつも、中臣鎌足の息子と娘を探している蘇我入鹿。

中臣鎌足の娘は妹背山に住むカップルに匿われていた。しかしこのカップル訳アリで、妹山・背山にそれぞれ実家があるのだが、この両家は政治的理由で非常に揉めている。でも子供同士は愛し合っている(ロミオとジュリエットだと思ってください)

妹背山カップルが中臣鎌足の娘のことを知っているようだと嗅ぎつけた蘇我入鹿は、妹背山の両家に無理難題を押し付ける。

天下の蘇我入鹿の命令は絶対。押し付けられた難題のせいで、両家は泣く泣く自らの子供を手にかける。

カップルは死して夫婦となり、両家は仲直りしたのであった(ほんまロミジュリやん)。

場面代わって、三輪山のふもとで働くお三輪は、隣に住む美男子に一目ぼれする。

実はこの美男子こそ、中臣鎌足の息子であった。

美男子には橘姫(蘇我入鹿の妹)という恋人がいた。

橘姫を追って蘇我入鹿の屋敷へ忍び込む美男子。その美男子を追うお三輪。お三輪は「婦女庭訓」を振りかざして橘姫を口撃します。

しかし美男子と橘姫は結婚することに。嫉妬に狂ったお三輪は屋敷に押し入ろうとしますが、中臣鎌足の家臣に殺されてしまいます。

なぜ中臣鎌足の家臣がお三輪を殺したかと言うと、蘇我入鹿を倒すのに「嫉妬に狂った女の生血」が必要だから。

自分の死が美男子を助けることに繋がるのだと知ったお三輪は嬉しそうに死んでいきます。

~Fin~

著者の大島真寿美さん

文楽がお好きとのことで、浄瑠璃をテーマに選んだのも納得ですね。

近松半二を描こうと思ったのではなく、「妹背山婦女庭訓」を題材に、というところからこの作品が生まれたそうです。

歌舞伎・浄瑠璃が好きな人、そして物語が好きな人におすすめの一冊です。

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び[ 大島真寿美 ]

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読んでくれてありがとう!ほんじゃあね!

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